村本奈穂さん に講演していただきました。

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平成28年4月14日21時26分 熊本地震が発生。

被害が大きかった南阿蘇村で被災した村本奈穂さん。

村本さんは歯科衛生士。

かつては凄腕を持つ有名な歯科医院での勤務経験がある。

崩落した阿蘇大橋からわずか3キロの地点で、本当に死ぬかもしれないという震度7という大地震を経験した。

家族の安否を確かめるまで、泣きながら実家へ車を走らせた。

 

明るくなり、目にしたのは変わり果てた故郷の風景。

道も通じていない、電気もつかない、水も出ない。

余震は何度も容赦なく襲う。

 

「自分は生き残ったと」思った時、なにを思ったか。

カーラジオからは、南阿蘇村に通じる道は寸断されているという情報が。

完全に孤立状態。

「終わった・・・・、こんな小さな村になんて誰も助けになんかきてくれない」そう思ったという。

 

冷静になってふと考えた。

 

自分が勤務したばかりの老健施設の入所者の人たちのことを。

 

ちょっと待って。

 

もし、あの入所している高齢者が誤嚥性肺炎になって死亡したら、きっと世の中の人たちは、あの村に歯科衛生士はいなかった、と思うだろう。

歯科衛生士は・・・・・私がいる。

私は歯科衛生士・・・・・・

もし、この地震でライフラインが寸断されている状態の中で、誤嚥性肺炎になった高齢者をだしたら、私のせいだ!

 

自分がやらないで、誰がやるの?

動かなきゃ!

 

村本さんの闘いはそこからはじまる。

 

その後すぐに村本さんはSNSを通じて全国に口腔ケア用品の支援を呼びかける。

全国からたくさんの口腔ケア用品という救援物資が南阿蘇に集まってくる。

そこから彼女は避難所を回り地道な口腔ケア活動を繰り広げる。

 

西日本新聞からは「故郷救う歯磨きケア」として取材をうけ、テレビにも報道され、一躍村本さんは全国的に有名になる。

村本さんはあの時の地震で、自分の使命と向き合い、勇気をもって村の高齢者を医療人として救ってきた。

「生かされたから役にたたなくちゃ」ただ、そういう気持ちでがむしゃらに自分が歯科衛生士として、できる事から始めた。

 

私は村本さんに、あの日から今日までのことを、自由に話してくれませんかと、自分の医院の職員を対象にプライベートセミナーをお願いした。

以前からちょっとした顔見知りでもあったので、村本さんは、気持ちよく私のセミナーの依頼に応じてくれた。

 

プレゼンテーション能力がとても高いことを知っていたので、期待していたが、彼女の力は想像以上。

 

こうだった、ああだったと地震のことを振り返るだけではなく、たくさんのEBMと、歯科医療従事者である私たち向けに多くの大切な知識と経験を見事にスライドに盛り込んでくれた。

中央社会保険医療審議会総会に寄せられたデータにおいて、歯科衛生士が入院患者の口腔ケアに携わることで、入院日数が112.9日だったものが、57.5日とやく半減したというデータや、嚥下や誤嚥のメカニズムをわかりやすく動画などで村本さんは解説してくれる。

村本さんは笑顔でみんなに語りかけ、明るい口調でテンポよくプレゼンを進める。

話にみるみる引き込まれ、ええー!もうこんな時間になったのと、時計をみると2時間半が経過していた。

 

そして、村本さんの講演が終わり、職員の一人が感想を話しだした。

 

最近、口腔ケアに携わっている体験を話しながらその職員は急に涙をこらえきれなくなった。

ご高齢のその患者さんはもう余命宣告されているにも関わらず、家族や本人の希望で口腔ケアを続け、それまで口から食べることができなかったのだが、お亡くなりになる数日前には大好きだったクリームパンを口にすることができたという。

その経験を泣きながら懸命に皆に語ってくれた。

【話に聴き入る村本さん】

 

語ってくれたその職員は、高齢の人が自分らが口腔ケアしていて、回復していく様子を思い出し、自分たちの仕事がどんなに素晴らしいかを、改めて認識したというのだ。

今回は、私が職員向けに依頼したプライベートセミナーであったが、これは、多くの医療従事者に話をしてほしい内容だ。

そこで私はこう思った。

村本奈穂さんこそ、TEDに出場してほしいと。

TEDに出場することで、それは翻訳され世界に大々的に発信される。

すると、世界の医療関係者はその動画の何度も何度も再生し、勉強する。

さまざまな学会、勉強会、セミナーで使用されることは必至である。

いや、村本さんのわかりやすい話であれば、老健施設、介護施設、グループホームなどでも、きっとスタッフや入所している家族の啓蒙活動としても用いることだってできる。

さらにそれを観た一般の人たちにも、「口腔が命に関わる」ということが認識し始めると、さまざまな疾病は予防されるに違いない。

すなわち、苦しむ人は減り、健康な人が増え、医療費は大幅に削減される。

そうなると、動画再生回数は伝説的な数字を記録するに違いない。

一人の歯科衛生士が世の中を変えるかもしれない。

私は決して大げさに言っているのではない。

彼女のエネルギーであれば、それは十分に実現できる。

少なくとも村本さんの行動が、これから迎える日本の超高齢化社会の中で生まれてくるさまざまな問題の解決の糸口になることを私は確信している。

 

本当に素晴らしい講演であった。

 

これから歯科医療従事者は、「人の命を守っている」という姿勢と誇りを持たないといけないことに気が付かされた。

 

 

 

今日は4月11日。

あの地震からあと3日で丸2年となります。

私はあの日から何度も熊本市や阿蘇へ入っています。

今年もまた、熊本へ行く予定をいくつか作っています。

実際に、そこに行って、そこの人に話を聴くことがいかに大切かを実感しています。

今回、同じ歯科医療と言う立場から多くの話をしていただい村本さんには心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文責

医療法人良陽会 鶴田歯科医院

理事長 鶴田博文

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